ガールズ・ブラボー
連載28(Ver1.0)
◆ ◇ ◇
「どう?環境は」
「環境はすごく、いいよ」
「ふうん、なにがいいの?」
「みんないい人だし、」
「いいなぁ、私のところなんて、本当、下っぱあつかいだよ」
「そうなの」
マキさん、高原さんからのお誘いを断腸の思いで断わったのは、この日、同期の人たちとの会があったからでした。グループそれぞれに配属されてからの、久しぶりに集まりとなりました。
まだ、みなさん直接の仕事には、あまり関わっていないので、ほんとんどが集合できました。こういうことは、今だけなのかもしれません。
周りの人の話を聞いていると、雑用をまわされることが結構、多いらしいのです。コピーや、会議中のお茶。電話取りなど。
「マキのところはどうなの?」
「みなさん、自分のことは自分でやってるし、別に・・ なるべく、電話は取るようにしているけど」そう答えます。
やっぱり、あのグループ、評判良かったもんね。と云われます。確かにそうなのかもしれないです。他の意見を聞くと、その様です。
「岡崎って、今いるの?付き合っている人って?」
「はぁ?」酔った勢いなのか、男の子に云われます。
「いないけど・・」
「じゃあ、デートしようよ」
「本気?」
「半分本気なんだけど」
「どうして、半分なの?」
「酔いが覚めたら、後悔するかもしれないから・・」
一次会だけで失礼することにしました。高原さんのマンションに押しかけようという魂胆です。まだ、みなさん揃っているでしょうから。RightNow *1 で電車の時刻をチェックします。
連絡を入れようと、携帯電話を手にしたときに、知っている顔が目に入りました。
「美由さん」
「あれ?マキちゃん。飲み会?」
はい、と答えます。パチンコ店から出て来た彼女と会ってしまったのでした。
「パチンコですかぁ?」
「いや、パチスロってやつ」少し、お酒が入っているのか、美由さんいつもと口調が違います。また、マキさんの知っている彼女とも違って見えます。
「負けたんです?」
「ううん、勝った・・・」と云いますが、なんか暗いです。
「飲み会だったの?」「はい」同じことを、また、訊かれます。
「もう一件、行かない」
いいですよ、と携帯をしまいます。まあ、タタさんには明日、確実に会えますから。実際、美由さんとはたまに会話を交す程度で、あまり、じっくりとは向い合うことがありませんでした。同期の人とくらいしか、事務関係の人と話すこともありませんし。
しゃれた雰囲気のお店に入ります。美由さんはよく来るらしく、お店の人と親しげです。
「ここ、よく来るのですか?」
「うん、時々ね」
「スロットってよくするんですか?」
美由さん首を振ります。
「今日、初めてやったの」
「そうなんですか」 Palm Slot *2 ってあったなぁ、と思い出します。
「ちょっと、むしゃくしゃしてたからさ・・」
「しごと、ですか?」ちょっと、恐るおそる訊いてみます。
美由さん、ワイングラスを片手に頬杖を付き、眉間に皺を寄せています。マキさんから見れば、そんな仕草がすごく魅惑的に見えてしまいます。
「さけてるの」
「なにが、ですか?」
美由さん、首を振ります。
「べつに、服がほつれてるって云っているんじゃないの」不機嫌そうに云うと、また、しばらく黙ります。(裂けて) ではなく、避けてということでしょうか。
「あんにゃろう」呟きます。
「有川さんですか?」
「そうよぉ、あいつ避けてるの、私のこと」
どうやら、それで慌ているらしいのです。マキさん、彼女のグラスに注ぎます。
「気のせいじゃないですか、私から見ると有川さんいつも通りに見えますけど」
また、美由さんは首を振ります。
「だって、このところ二人で会ってくれないのよぅ」
まだ、この環境に馴染めていないということでしょうか。マキさんは有川くんのために、ここまでなってしまう美由さんが分かりません。有川くんのどこにそんな魅力があるのでしょうか。
それから、しばらく、愚痴を聞く側にまわっていました。
ひと通り話すと、ちょっと満足したみたいです。美由さん、グラスを見つめて溜め息です。
「好きなんですね」
え? マキさんの言葉に驚いたらしいです。
「いいなぁ」卒直な意見を云います。
「有川さんて、美由さんのこと話す時って、すごく嬉しそうなんですよね。のろけだよなぁ、あれは」
本当? それを聞いて、急に元気になってしまったみたいな、美由さんです。
(すごく、かわいい人かもしれない・・) マキさん、そう思ってしまうのでした。
もう帰りましょう。そう云ってみたのですが・・・
「これから、カラオケに行くの」
「そうなんですか?」
マキさん Pilot を取り出して、時刻を確認しようとしていたのですけど、
「なに?他人ごとみたいに。一緒に行くの」
「え、ふたりで、ですか?」
「なによぅ、あたしのマイクじゃ歌えないってぇの」
美由さんは、マキさんと腕をがっちりと組むと、歩き始めます。そして、また、夜の街へと消えて行くのでした。
◇ ◇ ◆
註
*1: 田村博さん作成の時刻表アプリケーションです。愛用されている様です。
*2: パチスロゲームです。とても雰囲気のある画面ですね。soda さん作成です。

